Contents

BACK NUMBERS

Column

Column

うちやま呼吸器・アレルギークリニック院長

よもやま話 #7

家に居るということ


 かなり、寒さが本格化して参りましたが、皆さんは風邪などひかれてはいませんか?うがいや手洗いをしっかりと行って、感染予防に心掛けて下さいね!

 さて、お知らせのページに掲載しましたように、当クリニックでは11月より「在宅療養支援診療所」の登録を行っております。この制度は、長期に入院するのではなく出来るだけ「在宅」で過ごしたいと願っている方たちへの支援を積極的に行うためのものです。 当然、医療費の削減を行いたいという厚生労働省など行政の思惑もあってのことでしょうが、私はあえてこれに乗っかった訳です。その理由を皆さんに少しお話しさせていただきたいと思います。

 私がクリニックを開院するまでは、ご存じの通り「磐田市立総合病院 呼吸器内科」に勤務しておりました。皆さんの中には、病院を受診または家族を受診させた際に、私を始めとする担当の医師から「病院には長く入院できない」と冷たく告げられた経験をお持ちの方がいらっしゃるかと思います。勤務医にとっても、「入院させて欲しい」と願う患者・家族に「退院しなくてはならない」と告げることはとっても辛いことのひとつです。昔は、「3ヶ月」といっていた入院期間が、行政の指導もあって「2週間」となり、そしてそれは更にどんどん短くされようとしています。皆さんは余りご存知ないかと思いますが、特別な治療を行わなず単に入院しているだけで、1日に約3万円程度の医療費がかかっています。これを少なくして国民医療費を抑制するために、行政は"飴とムチ"をふるって病院を操っているのです。つまり、一般的には入院期間の長い患者さんは病院の収益にならないため、短い間隔で入退院を行うほど「優秀」な病院として評価されるという仕組みなのです。(語弊があったらごめんなさい!)

 このように書くと、「なんてひどいことを」を思われるでしょうが、実際の現場でみていると、しっかりと計画をたてておけば、たとえ短い入院期間でも検査・治療は十分に行えることの方が多いのも事実です。決して、入院期間を短くしたから、医療が十分に受けられない方が増えてしまったということではないように見受けられます。どちらかというと御家庭や社会的な事情にて、医療としては必須ではない入院生活を過ごされている方も未だに少なからずいらっしゃるのです。

 それでは、皆さんに質問です。もしも、"あなた"が治癒しない病気にかかっているとしたら、あなたは入院を希望しますか?それとも、在宅診療を希望しますか?

 実際にこのようなアンケートを行うと実に9割の方が自分の場合には「在宅診療」を希望されるようです。しかし、同じような質問でも"あなた"ではなく"あなたの家族"が・・・という質問に変えると、「入院」を選ぶ方がほとんどになるそうです。矛盾していますよね。永年にわたって病院に勤務してきた私から見て、入院生活とは決して"快適なもの"ではありません。特に高齢の方たちにとっては、入院して環境が変わってしまうことに適応できずに、逆に病状が悪化してしまうこともあるほどです。私は、以前にこの「よもやま話」で「肺炎の話」にも書いたように、勤務医の頃から「出来るだけ入院せずに治しましょう。」と言い続けてきました。それは、病院や行政の指導があるからと言うのではなく、もしも実際に私自身が療養の場所を選ぶことになったら、出来るだけ家族の側で、慣れた環境で療養したいと思うからなのです。

 でも、家に帰ると十分な治療が出来ないのではないか?と心配している方、入院していれば看護師さんやお医者さんが診てくれるけど、家に帰ると何もわからない家族だけで介護しなくてならないのでとても帰りたくても帰れないという方も多いのではないでしょうか?そのような不安・悩みを多少なりとも軽減し、安心して在宅療養を過ごしてもらえるように支援していこうというのが、当クリニックで今回申請・登録した「在宅療養支援診療所」という制度なのです。クリニックに通院しながら、困ったときに主治医に連絡・相談が出来、時間外でも診療の指示が受けられ、必要であれば往診もしてもらえるのです。

 ただし、当クリニックのように「医師 ひとり」ですと、学会等で出掛ける場合もありますし、連絡が重なってしまうこともあり得ます。ですから24時間いつでも必ず診療が受けられるという保証がしっかりとは出来ないということが、現在の大きな悩みです。必要な方が必要な支援を十分に受けられるようにするためには、皆様にもこの制度の仕組みと限界についてよく理解していただき、御協力をいただかなくてはならないと思い、今回このテーマについて書かせていただいています。今後は、磐田市立総合病院との連携や、他の診療所の先生方との連携、訪問看護ステーションとの連携などをより深めて、より多くの皆様に適切に対応していけるようにしていきたいと思っています。実際にまだまだ少数の方のみですが、電気自動車での訪問診療も開始しております。

 今後とも、これまでと同様に当クリニックの診療に御理解と御支援をいただければ幸いです。また、もしも在宅診療についてご相談のある方がいらっしゃいましたら、是非当クリニックまでいらしてください。できるだけお力になれるように対応させていただきます。