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うちやま呼吸器・アレルギークリニック院長

よもやま話 #36

"5年前のあの日・・・。"


平成23年3月11日 そう、その日も今年と同じ金曜日でした。
3月一杯で病院を退職し、クリニックを開業する私のために呼吸器内科や病棟の皆さんが"送別会"を計画してくださっていた日でした。
午後になって、気管支鏡検査の間、次の患者さんを待っているときになにやらめまいのようなものを感じたのです。全体になにかゆらゆらと。その時は、「あ?、疲れているんだな!」と思ったのですが
気がつくと,周りにいた皆が揺れていたのです。そして、そこに居合わせたひとりの医師が持っていた携帯に「緊急地震情報」が!!
とうとう30年以上来なかった東海沖地震が来たのか?
いや、「震源地は東北だそうです!」その一言で皆凍り付きました。
とてつもないことが起きている???
検査を急いで終了させ、医局に戻るとTVに流れるリアルタイムの津波の映像に皆の目が釘付けとなっていました。

自宅に連絡して家族の無事を確認し、病院近くのクリニック建築現場にも足を運びました。幸い、揺れも激しくなく怪我も破損も特にありませんでした。
何とか、仕事を終えて送別会後に宿泊するために予約していたホテルにたどり着きました。チェックインを終えて会場までのタクシーを頼んだのですが・・・。電話がつながらないとのことでタクシーは手配できませんでした。やむなく会場までの約3Kmを30分以上かけて歩きました。
それぞれ大変だったとは思うのですが、現職場の方のみではなく,既に退職されていた方々も含め皆さん多くの方々が集まってくださり不謹慎だったかも知れませんが、楽しく貴重な時間を過ごさせていただきました。お集まりいただいた方々、本当にありがとうございました

そして、5年の月日が流れました。
私は被災された方々のためにいったい何ができたのでしょうか?
幾ばくかの義援金を支払い、何人かの避難されてきた方の診療に携わらせていただくこと。患者さんの中で定期的に被災地を訪れて
その現状を写真で説明してくださることに耳を傾け・・・。
結局、一度も被災地を訪れることもなく、何もなあんにもできていない自分がここにいます。多くの方々がお亡くなりになり、そして多くの方々が今もなおもがき苦しんでいる。そういった現実をメディアを通じて認識はしているつもりですが・・・。やはり、何もできていない。

本日は、スタッフの体調不良のために臨時休診でした。
1日普段できない部屋の片付けや,書類整理をして過ごしながら
明日の震災5年目の日を前に落ち着かない時間を過ごしています。
身近な人が被災した訳ではないので,何もできていなくても仕方ないのでしょうか?いや、決してそうではないでしょう。
では、何をすればいいのでしょうか?
答えはすぐには見つからないのかと思いますので
自分自身に常に問い続けながらこれからも過ごしたいと思います。

1つだけ、間違いなく1つだけ言えることがあります。
それは、たとえ5年経ち、10年いや100年経ったとしても
決してこの体験は風化させてはならない!!と言うことです。
東北の人々のみではなく日本人全体としての悲しいけれど貴重な
体験であり,国民皆でその痛み・苦しみは分かち合っていかなくてはいけないのです!

その想いのみでこの文章を書いてみました。
何の方針も、何の提案もない駄文ですが読んでくださった皆様の
心にわずかでも復興への灯火がともれば幸いです。
ありがとうございました。